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アメリカの学校教育
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マイノリテ・ 移民者・障害者の教育

  掲載項目
  1. マイノリテイの生徒
  2. 移民の生徒
  3. 障害者教育

マイノリテの生徒

全国の公立小・中・高等学校の39パーセントの生徒は、白人以外のマイノリテの生徒である。 1972年に、公立校の生徒のうち、22パーセントだった白人以外のマイノリテの生徒は、 2000年には、39パーセントなっている。特に、ヒスパニック系の生徒は、1972年の6パーセントから17パーセントに増加している。マイノリテの 生徒は、特に、西部、南部に集中している。西部では、49パーセントの生徒、南部では、45パーセントの生徒、北西部では、32パーセント、中西部では、 24パーセントが、マイノリテである(Condition 2002)。

2000年の秋、公立校生徒(幼稚園から12年生)の人種・民族構成は、白人(61.2%)、黒人(17.2%)、ヒスパニック系(16.3%)、アジア 系・太平洋諸島(4.1%)、アメリカンインデイアン・アラスカネイテイブ(1.2%)である。2020年までに白人以外の生徒は、ほぼ半分を占めるよう になる。一方、公立校教師は、1996年春、90.7パーセントの白人(4パーセントのヒスパニック系を含む)、7.3パーセントの黒人、1.0パーセン トのアジア系・太平洋諸島、1.0パーセントのアメリカンインデアン・アラスカネイテブ から成る。また、2000年の秋、高等教育機関(大学等)に登録した生徒の人種・民族構成は、白人(71.8%)、黒人(11.3%)、ヒスパニック系 (9.5%)、アジア系・太平洋諸島(6.4%)、アメリカンインデアン・アラスカネイテブ(1.0%) である (Digest 2003)。

黒人の子どもは、一般に、白人の子どもに比べて、社会経済的に不利な状況にいる。黒人の子どもは、片親(母親)世帯が多く、 都市部の 貧困地帯に住んでい る可能性が高い。貧しい家庭の子どもは、成績が悪く、 学校中退者の割合が、高い傾向がある。1995年に、黒人の子どもの42パーセント、 白人の子ど もの11パーセントが、貧困世帯に住んでいた。1970年代から、黒人の子どもの親の教育レベルは、より高まった。一般に、親の教育レベルが高いと、子ど もの教育活動によい影響を与える。

25歳から29歳までの黒人で、高校を終了した人は、1971年の59パーセントから、1997年の87パーセントに増えた。この期間に、白人は、82 パーセントから93パーセントに増えた。1997年までに、高校を卒業した25歳から29歳のうち、68パーセントの白人、 54パーセントの黒人が、大 学(コミュニテイカッレジも含む)を卒業していた(Condition 1998)。

ヒスパニック系の子どもの人口は、急激に増え続けている。ヒスパニック系の子どもは、2001年には、全体の16.2パーセントを占め た。2020年まで には、20パーセント以上の子どもが、ヒスパニック系だと予測されている。2000年の人口調査によると、ヒスパニック系の66パーセントは、メキシコ出 身、14パーセントは、中・南米出身、9パーセントが、プエルトリコ出身、5パーセントが、キューバ出身である。ほぼ半数(46%)のヒスパニック系は、 メトロポリタンの中心都市に住んでいる。一方、白人の4分の1(21%)が、メトロポリタンに住んでいる (Padrón et al. 2002)。

1996年、白人の学校中途退学率は、7パーセントで、ヒスパニック系は、29パーセントである。外国生まれのヒスパニック系の生徒は、アメリカ生まれの ヒスパニック系の生徒よりも、高校を卒業しない可能性が高い。16歳から24歳で、中退率は、外国生まれで、46パーセント、アメリカ生まれで、18パー セントである。1997年に25歳から29歳で、高校卒業の資格を持っている者は、白人で93パーセント、ヒスパニック系で62パーセントである。 1996年に、ヒスパニック系の高校卒業生18歳から24歳の34パーセントが、白人の45パーセントが(短期)大学に登録した。25歳から29歳のヒス パニック系の高校卒業者の中で、四年制の大学を卒業したのは、1981年の13パーセントから1997年の18パーセントに上がった。一方、 白人は 1980年の28パーセントから1997年の35パーセントに上がった(Condition 1998)。

アジア系・太平洋諸島アメリカ人は、1200万人(全人口の4パーセント)で、高い出産率と移民により、急増している。2020年に は、2000万 人に 到達すると見積もられている。カリフォルニア州、ハワイ州、テキサス州などアメリカ西部に、ほぼ半数が、住んでいる。ほぼ3分の2のアジア系が、家庭内 で、母国語を話す。ほぼ11パーセントのアメリカ生まれの子ども(ヒスパニックは3パーセント)は、家庭内で、英語を話す。二世の子どもは、ほぼ50パー セント(ヒスパニック 16%)、三世の子どもは、85パーセント以上(ヒスパニック66%)が、家庭内で、英語を話す。1997年、貧困率は、14パーセントで、白人より、9 パーセ ント多く、黒人やヒスパニックより、 27パーセント低い (Schwartz 2002)。

アジア系アメリカ人の生徒は、一般に、学業成績がよく、教育達成度も高い。アジア系アメリカ人の中でも、特に、移民の親を持つ第一世 代、 第二世代の生徒 は、アメリカ生まれの親の生徒よりも、数学、 英語のテストで、より良い成績を収めている。また、社会経済的地位の高い家庭の生徒は、低い地位の家庭の子 どもよりも英語、数学のテストの成績が良い傾向がある(Ong and Wing 1996)。

アメリカン・インデアンは、カリフォルニア州、ニューメキシコ州、アリゾナ 州に集中している。近年、アメリカン・インデアンの生活は、住居、教育、同化などの面で、多様 性が、増している。2000年の人口調査によると、アメリカンインデアンとアラスカ原住民は、 240万人で、人口の0.9パーセントを占めている。49,000人以上の生徒は、民族学校に、400,000人(89%)は、公立・私立の学校に通って いる。1996年秋、134,000人のアメリカンインデアンが、大学に通っている (Shutiva 2001 )。アメリカン・インデアンの学歴は、全国平均を下回っている。

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移民の生徒

1990年に、アメリカの学校や大学に、全ての生徒の5パーセントにあたる、230万人以上の移民の子どもが通った。移民の子どもの4分の3は、カリフォ ルニア州、フロリダ州、イリノイ州、ニューヨーク州、テキサス州に集中している。1980年から1986年までの高校生の追跡調査によると、移民の子ども の教育達成度(高校卒業率と大学進学率等)は、アメリカ生まれの親の子どもに比べて、同じぐらいか、それ以上である。移民の生徒と彼等の親は、アメリカ生 まれの生徒と彼等の親よりも、学校教育を重視し、大学教育にも、より高い期待をしている。高校卒業率は、アジア系、白人、黒人、ヒスパニック系の移民の子 どもの順に高い。移民者の高校卒業生は、アメリカ生まれの高校卒業生よりも、大学に行く確率がより高い。 アジア系の移民者、 アジア系アメリカ人は大学 進学率が、一番高く、ヒスパニック系の移民者、 ヒスパニック系アメリカ人が一番低く、 白人と黒人はその間である。アジア系の高校卒業生の5人のうち4 人が、大学へ行ったが、 ヒスパニック系の高校卒業生のうち、 2人に1人が大学へ行った。移民の若者で、主に、15歳をすぎて、アメリカに来たヒスパ ニック系の若者の多くは、アメリカの学校に行っていない (Vernez and Abrahamse 1996)。

家庭で、英語以外の言葉を話す人が増えている。5歳から24歳までで、家庭で英語以外の言語を話している人は、1979年の8パーセントから、1999年 の17パーセントに増加した。英語を話すことが難しい人は、6パーセントである。家で英語以外を話す人(5歳から24歳まで)のうち、72パーセントが、 スペイン語を話し、英語を話すのが、難しい人の78パーセントが、スペイン語を話す。この増加の一つの原因は、ヒスパニック系の人口が、増えたからであ る。1999年に、5歳から17歳までの子どもで、家庭で、英語以外の言語を話している子は、ヒスパニック系の子どもは、71パーセント、白人と黒人は、 4パーセントである (Condition 2003)。

英語力が限られた(LEP)生徒に対して、一般的に、外国語としての英語(ESL)教育や二ヶ国語教育を提供している。LEPの生徒のためのプログラムに 参加している生徒の75パーセントは、ヒスパニック系である (Padrón et al. 2002)。LEPの生徒は、普通の授業から取り出され、生徒の英語のレベルに合わせて、一日のうち、1-2時間から、週に2-3時間等のESLの授業を 受ける。教師は、必ずしも生徒の母国語を話さなくてもよい。LEPの生徒が少ない時は、LEPの生徒は、特別な指導を受けず、普通のクラスで英語を話す子 どもたちと一緒に教育を受けることもある。

一方、二ヶ国語教育では、生徒は、教科科目の内容について母国語で教えられる。二ヶ国語教育 のほとんどは、小学校で行われている。LEPの生徒は、母国語で、読み方、書き方を習い、簡単な英語で、数学、理科、社会を学んでいる。英語で、読み、書 き、話すことをだんだんと増やしていく。一学年に10人未満の生徒に二ヶ国語の指導が必要な時は、二ヶ国語教育の補助教師によって、個人的に、教えられる こともある (Rumbaut 1995)。

ほとんどの小学校では、三年後には、生徒が、移民の子どものための英語教育プログラムを終了するように目標を立てている。しかし、実際には、多くの子ども は、小学校の間、二ヶ国語教育プログラムの中に入っている (Rossell and Baker 1996)。中等教育では、LEPの生徒は、一般的に、ESLのプログラムに入っている。一日中、英語で指導が行われる。教師は、ゆっくり話し、ボデイラ ングエッジや多くのイラストレーションを使って教えるように訓練されている (Rumbaut 1995)。

最高裁判所は、1974年に、学校側は、LEPの生徒に何らかの援助を与える義務があると判決した。1976年に、カリフォルニア州で、二ヶ国語教育の法 律が成立した。カリフォルニア公立校の全てのLEPの子どもに、母国語ではなく、英語で、英語を教えることを提案した、提案227号「子どもに英語を」 が、1998年に、可決され、二ヶ国語教育は否定された。当時、カリフォルニア州で400,000人以上のLEPの生徒は、母国語で、二ヶ国語教育を受け ていた (LA Times 1998年5月6日)。提案227号は、子どもの保護者が、子どもの二ヶ国語教育を受けることを要求すれば、子どもが、二ヶ国語教育を受けることを認めて い る。また、生徒は、必要ならば、特別な補助を受けることができる (LA Times 1998年6月4日)。

カリフォルニア州では、二ヶ国語教育を受けている生徒の数は、1997年の410,000人以上から2002年の152,000人以下に減少した。ロサン ジェルス学区では、735,000人生徒全体の300,000人が、限られた英語しか話さなく、5パーセントの生徒は、二ヶ国語教育を受けている (LA Times 2003年1月4日)。提案227号以前は、カリフォルニア州で、29パーセントが、二ヶ国語教育を受けていたが、今は、10パーセントが、一部を母国語 で教えられている。サンタアナ学区では、62,000人の生徒のうち、68パーセントが英語を学んでいる。提案227号から5年間、母国語教授のための申 請した保護者のほぼ全員が、子どもの母国語教育を認められていた。2003年、3844件の許可があった。カリフォルニア州のほとんどの学区では、二ヶ国 語教 育プログラムを提供していない。各学年で、少なくとも20の申請許可を受けないと二ヶ国語教育プログラムを提供しない(LA Times 2003年10月6日)。

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障害者教育

1975年の障害者教育法は、障害を持つ生徒に、「最も制限されていない状況」で教育を受ける権利を保証している。また、公立校は、1968年の建築障害 物法により、学校の設備は、全て、バリアフリーでなくてはならない。2003年度に、連邦政府の障害児補助プログラムに参加している障害児(3歳から21)は、6,633,000人で、全人口(3歳から21)13.8パーセントである。障害児は、特異的学習障害(障害児の42.7%; 全人口の5.9%)、言語障害(21.7%; 3.0%)、知的障害(8.9%; 1.2%)、情緒障害(7.4%; 1.0%)、聴覚障害(1.2%; 0.2%)、整形外科的障害(1.2%; 0.2%)、その他の健康障害(7.0%; 1.0%)、視覚障害(0.4%; 0.1%)、重複障害(2.1%; 0.3%)、自閉症・外傷性脳損傷(2.8%; 0.4%)、発達遅滞(4.6%; 0.6%)を持っている (Digest 2005)

教師は、社会的か学問的に通常の授業に参加することが困難になっている生徒に対して、一般に、保護者に連絡し、教師、保護者、特殊教育専門教師等からなる 生徒学習チーム (SST)を形成する。生徒が特別教育を受ける必要があるかもしれないと判断すると、生徒の技能や学習態度などの正式の評価を行う。それにより、特別教育 が必要だと推薦されたら、個別教育計画を作る。特殊教育に子どもを配置するとき、又、特殊教育から移動させる時は、保護者の承諾が必要である。

ほとんどの障害児は、通常学校の普通クラス、リソースルーム、障害児クラスや障害児学校で、 学んでいる。1988年から、アメリカの学校では、障害を持 つ生徒にとって、通常のクラスに入ることが「最も制限されていない状況」であることが多くなった。2000年度、障害児生徒は、公立校の生徒登録数の 13.3パーセントである。1999年度に障害児教育を受けた6-21歳までの障害児は、普通クラス(47.3%)、リソースルーム(28.3%)、特別 クラス(20.3%)、公立障害児学校(1.9%)、私立障害児学校(1.0%)、公立障害者施設(0.4%)、私立障害者施設(0.3%)、自宅・病院 設定(0.5%)で教育を受けた。普通クラスは、一日のうち21パーセント未満を普通クラス以外で過ごすこと、リソースルームは、一日の21パーセントか ら60パーセント未満を普通クラス以外で過ごすこと、特別クラスは、60パーセント以上を普通クラス以外で過ごす。1999年度に、6歳から21歳までの 障害児で、一日の80パーセント以上の授業を普通クラスで受けた障害児は、46.1パーセント、一日の40パーセントから79パーセントの授業を普通クラ スで受けた障害児は、28.3パーセント、一日の40パーセント未満の授業を普通クラスで受けた障害児は、20.3パーセントであった。特別施設 (2.9%)、寄宿施設(0.7%)、家や病院(0.5%)で過ごした障害児は、非常に少ない(Digest 2003)。

学習障害児は 通常か、通常以上の知性・能力を持っているが、ある分野の障害(例:読書障害)により、学習困難に陥っている生徒である。学習障害児は、身 体的、精神的障害や貧困などの環境によって、学業成績の悪い生徒とは、区別されている。公立校の生徒の中で、6パーセントの生徒が、学習障害児であると認 定されている。多くの学習障害児は、読書障害児である。学校は、生徒をIQテストと読解力で学習障害児を決める。もし、IQテストが読解力のテストより、 はるかに良いと、その生徒は、頭がいいが、読解力が低いとされ、学習障害児とされる。しかし、多くの生徒は、不利な教育環境のもとで、正しい読み方を教 わっ ていないことにより、間違って、学習障害児とされているらしい。ある調査によると、15パーセントの学習障害者が、医学的に学習障害児の定義に当てはま り、多くの学習障害者は、学業業績の低い貧しい子どもであった。最近の研究によると、ほとんどの学習障害児の読解の問題は、早い時期、幼稚園の時に、正し い読み方と発音の指導があったら、読解力問題は少なかったか、なかっただろうとしている  (LA Times 1999年12月12日)。

高等教育機関は、障害者が、教育を受けられるように障害者用のサービスを整えなくてはならない。特別な試験形式、補助人、解釈者、車椅子のアクセスなどを 用意しなければならない。大学一年生のうち、障害者の割合は、1978年の3パーセント以下から、1998年の9パーセント以上に上がっている。1999 年度に、高等教育機関・大学の生徒の9.3パーセントが障害者であり、そのうち、26.0パーセントが何らかのサービスを受けている。障害のある生徒は、 身体障害者(29%)、精神障害者(17%)、 健康上の障害者(15%)、視覚・聴覚障害者(12%)、学習障害者・注意欠陥障害者 (ADD)(11%)、その他の障害者(15%)であった。1990年度には、障害者のプログラムに11パーセントの生徒が、2000年度には13パーセ ントの生徒が参加した (Condition 2003)。

22歳になると、1975年の障害者教育法の、無償で適応な教育を受ける法的権利がなくなる。その後は、州が、脳性麻痺や自閉症などの障害者が適応なグ ループやプログラムに参加できるように補助している。仕事に雇われなかった障害者、仕事が続けられなかった障害者には、グループホーム、デイプログラム、 施設などがある (LA Times 2002年6月23日)。1990年のアメリカ障害者法により、従業員15人以上の事業は、採用・解雇・報酬・昇進・その他の雇用条件に関して障害者を差 別してはならない。有資格者の(職務能力のある)障害者に対し、障害を理由に採用を拒むことはできず、また、昇級、昇進に対しても、差別は、されない。ま た、障害者が働くための設備を整えなければならない。職場の設備改善し、必要ならば、朗読者、手話通訳者の人的サービスも義務づけられている。

(文責:石 木田美貴)

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